キラリと光る小作品『ミクロコスモス』

1979年、夢YUMEKO子作。1981年初版GLコミックス『秋の日にラプソディー』、彼女の多分たった一冊の単行本、に収録されている5作品の中のひとつ。
親もなく、高校中退後東京に出てきてウェートレスをしていた杏樹は、都会の一人暮らしに耐えられなった時、ディスコ『ミクロコスモス』で大企業の御曹司大学生みゆきと知り合い、彼のマンションで一緒に暮らし始めました。
そこに家出少年雪人も加わり3人の同居生活。
しかしみゆきは事情で一時実家に帰ってしまいます。
その不在中来たみゆきの妹にふたりはマンションを追い出されてしまい、ミクロコスモスのマスターの世話になりながらみゆきの帰りをひたすら待ちますが、そのうちに雪人も家に帰ることとなり、ひとりになった杏樹はみゆきの家へ行くも彼の妹に『兄には許嫁がいるから近づくな』と追い返されてしまいます。
行き場を失ない、ミクロコスモスでひとり泣く彼女に手をさしのべたのは以前から彼女を見ていた黒メガネの男でした。
みゆきを慕いつつその男にすがり、杏樹は消えてしまいます。
みゆきは彼女を絶対探し出すと誓うのでした。大島由美子の多大な影響を受けたであろう絵柄。
これを読むとなぜが森茉莉の『恋人たちの森』などの物語を思い出します。
特にこの黒メガネの男など。主人公の杏樹が中性的で美少年にも見えるからかもしれません。
ヒリヒリするような都会の孤独。夜、人と別れて誰もいない明かりのない部屋へ帰っていく寂しさ。
誰でもいいから人肌の温かさがほしい、という思い。
うまく言えませんが、どこかフランス的な雰囲気のお話です。
モラル臭さはなく生活臭もなく、空気は乾いていて粋でお洒落。何となく心の隅に残っている作品です。